竜とそばかすの姫 鈴がBellになり、Belleになり、そして鈴として帰る物語

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みなさんは竜とそばかすの姫という最高の細田守作品をみましたか?

私はもう5回みました。今日なんかIMAXで、イオンモール

それではネタバレしていきますね! 全部だいたい妄想じみた思い込みです!

 登場人物、それぞれの「二面性」

本作では「現実と仮想現実」「本性とペルソナ」「秘密と本音」「肯定と否定」「人気者と嫌われ者」といったような対立が、キャラクターの設定にまで反映されていると思いました。

一見善的な人物でも鬱屈していたり、

逆も同様に、鬱屈しているようなキャラクターが実は愛情深かったりします。

なので登場人物をだいたい登場順にみていきますね(おもいつき)。

 

すずの母(すずの母)

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すずの母

中洲に取り残されたレジャー客の子どもを救うため、すず渾身の静止もなんのその。えいやと単身川に飛び込み救助し、亡くなる。

無謀とも思えるが、鉄砲水とかそれ以上の水位上昇など見越しての判断だった可能性もある。高知、四国というのは急峻な地形ですから、水流を読むのはほとんど不可能ではないかと。

すずの父がサマウォの消防隊員みたいな紺色のTシャツのイメージの細マッチョ日焼けマンなので、職場にそういう性質でいて、惚れた腫れたのなんだのあって結婚したのかもかも知れない。

そう考えると納得できる。

 

すず(主人公)

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内藤鈴

母親の影響か、歌が大好きだった。年長か小学生低学年時には多重編成の作曲もしていた天才。天使の歌声。

母親が水難救助で亡くなり、自分の大切に思うものは絶対に自分を置き去りにしてしまうという思いから、自己肯定感がまったくない

自分に叶えられることなんて何ひとつもないと考えていて、なにかをしようとすると、絶対に叶わない絶望とかそんな感じで、書いたものを否定する。自分を否定する。

「お母さん、なんで見ず知らずの子のために私を置いていったの?」と、

母親への非難的な思いもあり、それが「きっと正しいことなんだ」と分かっていても消化できず、過去と母親も、今の自分も否定し、自分にはなにもないと、唯一の取り柄である歌を歌おうとすると気持ち悪くなって吐く。

 

その割に、現場では母親の後を追いかけようと、あわや濁流に自ら入り込むところだった。

もう血じゃん。最初から示されてんじゃん。と、数回みるとわかる。

そういう、一貫してネガティブという冒頭のすず。彼女だけが常に「一面的に卑屈」で、異質です。

 

Bell

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覚醒前のベル

すずのAs

なおここでは、すずが=Belleになったのは、弟くんに、現実存在として「Belleは、素敵。Belleは、綺麗」とか言われる前日の、「自分が見ず知らずの子を助けるためにすべてを投げ打つような人間であると認め、母を肯定し、自分が何をしたい自分なのかが分かった」時と、定義します。 

Bellは一躍超有名歌姫となり、すずが自信を取り戻す要因になるのですが、

この時点ではまだ結局、

否定的意見にクヨクヨしたり、

身バレにビクビクしたり

想い人にの顔も、改善したけど、まだまともに見れなかったする上、

恋敵(仮)に「応援するよ!」だなんて言って、

その直後には「私何がしたいんだろう……」と泣く。

ちょっとは自信もついたのに、

誰にも晒せない秘密のために、結局一人でいることを選んでしまう。

だから、この歌は、自分と似た感じと、自分を突き動かす存在を通した、自分のことだと思うわけですね(雑)


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やけん、BellがBelleに進化するには、現実に誰かを、(ヒロちゃんのいう)『すべて』をなげうたないといかんわけです。多少無理筋だろうと、そうしないとすずは救われないのです。

あと、某子どもから、彼らの母親と同じ位置に同じようなコサージュをもらいます。

 

すずの父(すずの父)

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すずの父


すずの父。すずが傷ついていて、悲しげで、葛藤して10年くらい。

わかっているから踏み込めない、優しい、思いやりのある、物憂げな父親。

気に掛ける時の顔も物憂げで、最後にすずが帰ってきた時の顔も物憂げなんだけど、

「あ、違う物憂げだな」ってわかるのがイイ。

カツオのたたきで泣ける。うっ。

車はジムニーとかパジェロとかアウトドアなやつで、上の格好にリュックで出勤する。ウェットスーツとか干してあったんで、やっぱ消防関係だと思う。

何気に一番傷ついているであろう男

 

モデル高の一つ:都立西高校

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都立西高校

本作では、現実でも、「中心にその場の主たる登場人物がいて、それを周りが眺めている」という構成が多い。

この観客は、ネット・現実を問わず、「今、話題の現象」を眺める私たちであって、細田守「ネットも現実も結局同じですよ」って言ってる。

つまるところ、「ネットも現実も結局同じで、意見の相違、叛意、肯定、否定なんていうものは、もはやそこらへんに普通にあるものだから、ことさら力を割いて細かく描く意味も必要もない」なんて感じにも見えました。

そういうのに適切な物理的な舞台っぽい校舎を考えて、中庭があり、眺めやすい高校っていうのが選定基準になったかと。あと武蔵高校も設定にはあるらしい。

冷やかしで高校見学行ったのでわかるけど、こういう昭和のいくらかに建てられた都市部の高校は結構こういう構造をしているイメージ。

高知ならでっかい校舎一棟建てるだけなんじゃないかなあ。

なおメインの舞台は高知県です。

 

ヒロちゃん(別役弘香)

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別役弘香

すずの 保護者 親友。毒舌。枯れ専。数学がすごい。陽キャにいいやつなんていないとおもってる。

ご令嬢。見てくれこのマシンを。

ネットで自己実現を果たしている典型的なオタクで、すずのことが大好きで心配。

自分の成功体験からすずを「U」に招待する。

「いつまでも子どもみたいにグジグジグジグジ! アンタそれでいいの? せっかくBellになって、歌えて、自信取り戻して、これからなのに!」

みたいな叱咤には「すずにだって、人生を楽しむ権利があるんだ!」という親心みたいなものがあるんだと思うが、そこの考え方でしのぶくんと対立する。

親の期待を裏切れない&逆らえない、何らかの設定を匂わせる。

 

 

しのぶくん(久武忍)

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久武忍

すずの 保護者 幼馴染。

なにしおう、すずがすずの母を追いかけて濁流に足を踏み入れようとしたのを間一髪で止めたのは彼である。

以来、すずの父よりは一歩踏み込んだかたちですずのことをずっと心配しており、

本気で、「危うげな」すずを「守りたい」と思っている。

恋愛感情というよりはもはや親愛や慈しみ。ママ。

そういうのがあるので、最後の台詞は、すずの思いもあり、含みがあって秀逸。

「顔を見せて」「本当の姿で歌え」というのは、

さすがに脚本上考えなしにしかみえないけれど、

「本当は何を知りたいの」「本当は何がしたいの」といわれて、

すずは悩んで、泣いて、きづく。

唯一「U」アカウントを持っていない、現実ですずを待っているママ。

 

ルカちゃん(渡辺瑠果)

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渡辺瑠果

京都橘高校吹奏楽ばりの演奏とダンスをこなせる。

なお実際の演奏も京都橘高校吹奏楽

実は「自信がなく」「卑屈」だったりしていて、メールの文もオタクっぽい。

案外アニメをみて吹奏楽初めたのかも知れない。

最初の演奏時から想い人のことをチラ見しまくっているが、対面すると硬直してしまうようないじらし系なところがすずとそっくり。

意識してない人とは普通に話せるなんて当たり前のことかもしれないけれど、そういうとこもすずと共通させられている。

髪質とか、到底、高坂麗奈に及ばない、結局は田舎のかわいい女の子くらいの処理で、

「みんなは褒めてくれるけど……」

みたいなところがあり、ルリちゃんとすずは、これが運命の因果力というのか、惹かれ合うようなところがある、いい陽キャ

 

すずは「U」に招待されてもすぐに始めることはなかった。

・しのぶくんに「もう私大丈夫だよ」って言いたい(言いたくはない)という目標があって、

・憧れのるりちゃんを眺めていたらやさしくされたので、

「るりちゃんみたいに、太陽みたいな自分をみつけたい」

・と、覚悟を決め、その際アバターが「るりちゃん似」になったのに戸惑ったけど、そばかすをエクスキューズに結局それをつかうことを選び登録。憧れだから。

・歌えるようになって自信を取り戻したけど、それは結局自分とは違くてうゆうゆ…

 

あとヒロちゃんとめっちゃ意気投合する。

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東京都立西高校

楽器の作画もいいですよ。

 

守護神

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すずを見守ってきた地元の合唱隊の神たち

Bellの歌詞とか歌い方とか歌詞をみて。

「これ、すずちゃんよねえ」

「きっとそうよ」

「こんな立派に、歌って…」

とか最初から気付いてきっと泣いたりしてたんだけど、黙ってみまもっていた素敵なマダムたち。

ずっとすずのことを見守っており、

アバターが秀逸。

 

ここからが重要

DVマン

DVマンは、まあもちろん悪役なんだけど、実際に物理的に虐待する(殴る)描写が(音も)ない。

威嚇がメインで、虚勢を張っているのがメイン。

この人は(この人も)、臆病な人なんだと思う。

とくに逃げ様の作画演技も含めて、もののけ姫での猩々そのもの。

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もののけ姫「猩々(しょうじょう)」

この人の二面性としては、まあ同じような親に育てられて、いい職について、いい住宅地にでかい言えで、ベンツのゲレンデという高級車にのれているわけだけれど、

やはり鬱屈したところがあり、恐らく「最愛の奥さん」を亡くしたている。

 

この男にとって「家族」は事実「大切」で「守るべきもの」なのではあろうと思われるけれど、本当に大事なのは結局亡くなった奥さんだけで、

「後悔」や「責任感」から転化した、ある意味での「依存」

すなわち「家族というものは、ただひとり自分がruleしなければ、適切な形にならない」みたいなこじらせになってしまったと思われる。

「俺たち家族を引き離すのか!」と、明らかに家庭に執着している言葉を放つし。

 

すずは弟くんから、母の肖像と同じ位置に同じような薔薇のコサージュをもらい、

兄くんもそれを許容している。

 

DVマンをじっと見据えるすずは

オオカミ子どもの母くらいえげつなく強く優しい母性を発揮しており

オオカミ子どもの母くらいえげつなく強く優しい母性を持っていたのが少年らの母であり

オオカミ子どもの母くらいえげつなく強く優しい女性がDVマンの最愛の奥さんだったわけで、

 

そう考えると、「小娘」の目をみてかなり強く狼狽し、

威嚇するだけで結局殴らず、

「おばけでも見たかのように」逃げ去るDVマンにとって、

すずは幽霊、まさにオカルト体験だったってわけですよ。。

しらんけど。

 

 

 

あの兄弟も、

「戦わないとだめなんだ」

ってなったので、もしかしたら、対話して、お母さんのこととか話し合って、良好な家庭に戻る可能性もある。

だから、あのパートは必要です。

 

竜 

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「あなたはなぜ乱暴するの?!」

竜はネット世界では闘技場以外では正当防衛的なことしかしておらず、

Bellに「噛み砕くぞ❗」なーんて威嚇はするけど威嚇するだけで、とある存在Dと似ている。

痣も背中にしかなく、これは、とある存在Oを守るためにあるというか、発現したもので、それでいいというわけではないけれど、物理的な暴力は(少なくとも近年は)なかったのではないかと、やはり思われる。

「僕が耐えればいいだけだから」という秘密、傷が、胸を貫いて、背中に発現している。くらいの感じではないのか。

や、DVには変わりないんだけどね。

 

 

ジャスティ

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ジャスティ

この人はネット自警団ですね。ポリコレツイート警察みたいな。

なぜunvailという力をもっているかというと、ハッカーだからでしょう。

「曝し=懲罰」とか考えていて、やたらしゃべるし、

実態としてはキモヲタだと思うんですけど、

まあ「能力あるとアバターがよくなる」って設定ですし、

300桁とかのRSA暗号を一晩で解読する人やマシンがある世界なので、

鬱屈したものを、ネット世界で、正義の名の下に、ruleという形で昇華している。

そんなかんじでええやろ。

なおスポンサー企業の一つに「Bear Steel」というのがある。

 

AIちゃん、ヒロちゃんのAs

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カニ人(虎鶫)というイラストレーター、漫画家がキャラクターデザインを担当

とにかくかわいい

↑text-align:center;したい

 

 

 最後に:描かずにはいられなかった

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sasaki_kaicho